第二十一章

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「では、こちらでブーケトスを行います。独身の女性はどうぞお集まり下さい」 式場スタッフの司会を担当する女性が声を張り上げそう告げた瞬間、階段の両脇に並んでいた人達が一斉にガーデン中央の噴水へと目を向けた。 「参加しなくていいのか?」 「いや……、でも……」 矢野くんの提案に素直に頷けないのは、噴水前にまばらに集まる女性の年齢層がうんと若い事に躊躇してしまったから。 千春が一番前で大きく両手を開いて待ち構えているのを除けば、後は形だけでも……と、いった様子で母親に背中を押される制服姿の女の子達が数人。 割合でいえば親族の方が多い式なのだから、当然といえば当然なんだけども。 私だって女なのだ。もちろん、ブーケには憧れる。でも、あの輪の中に入るのは少し……いや、大分恥ずかしい。 矢野くんはそんな葛藤に気がついているのか、ジッと私を見つめたまま視線を外そうとはしない。 「本当にいいのか?」 「…………っ」 次の瞬間、 私はふんっと鼻息を荒くし、ヒールのかかとに力を入れ階段を駆け降りた。
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