第二十一章 #2

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マーガレット、ラベンダー、マリーゴールドにスイートピー等々。沢山の花が一枚の絵のようにして美しさを競い合い 水路を流れる水の音、遠くでは小鳥の鳴き声なんかも聞こえている。 まるで、どこかの避暑地にでも来たみたいだと思った。 時間がいつもよりゆっくりと流れている。 「本当に素敵な場所だね」 「そうだな」 小道をグルリと一周する間 へぇーとか、ほぉーとか…… いちいち足を止めて感動する私に、彼は絶えず相槌と微笑みを返してくれた。 特別何かを話す訳でもなく……ただただ、並んで歩く。それだけ。 とにかく穏やかで、静か。このまま木陰で眠ってしまいたくなるような安心感。 それは、私がしばらく忘れていた感覚だった。
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