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「怖くなかったか?ごめんな。もっと、早く気付いてやれなくて」
藤真の指先が私の髪を撫でる度に、背筋にゾクゾクと悪寒が走る。
「…………っ」
ど、どちら様ですか……
どこかに頭ぶつけた……?
そんな私の心情等つゆ知らず、店の奥さんがポゥッと頬を染め私達を暖かい目で見守る。そして、若いお兄さん連中に顔を寄せて語り出した。
「うちのお父さんも昔はこうだったよ。優ししくて、男前だったんだから!!ああ……、懐かしいわぁ。お父さんとの出会いは熱い夏の日。小樽の海水浴場だったわね……」
「よ、よせやい……!照れるじゃねぇか!」
カウンター内に立つ御主人はそう言いながらも、まんざらでもなさ気。
二人のような互いを想い合う夫婦は憧れるけど……
「那緒、顔色悪いけど平気か?……心配だな」
赤らんだ頬、潤みを帯びる瞳、柔らかく微笑む口角、とってつけたような甘い台詞。
……これがアルコールを摂取した藤真の最終形体。
「ひぃ……」
こ、怖過ぎるっ……。
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