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「……ほらな?」
パッと私から手を離した藤真が、渾身のドヤ顔を矢野くんに向ける。
何が……ほらな?だよ。
犯罪に手を染める一歩手前みたいな悪人面してたくせに……!!
ヒリヒリと熱くなる頬をさすりながら、心の中でベーっと舌を出した。
すると、スッと立ち上がった矢野くんが藤真の耳元に口を近付けた。
「……お前は那緒の事となると昔から後先を考えない……。笑える程格好が悪い」
「んなもん……、俺にはどうだっていいんだよ。いざとなりゃあ、こいつに首輪だってしてやる。ハイエナみたいな野郎共にかっさらわれないようになぁ?」
「……馬鹿馬鹿しい」
二人の会話は小さ過ぎて、私の耳には届かない。
けれど、矢野くんがすれ違い様にフッと諦めるような笑みを溢した瞬間を……私は見逃さなかった。
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