第二十五章

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しばらく、うつ向いていた柊子がフルフルと肩を揺らしながら顔を上げ 「……はぁーあ。つまんない。もうちょっと動揺してくれると思ったのにな」 吹っ切れたように、クックッと笑みを浮かべながらまた髪をかき上げた。 「本当……、意地悪な所は変わらないね?」 「まぁね。でも……、アンタは変わったわね。藤真の言っていた通り。強くなった」 「あははっ……、ありがとう」 昔の私なら……、泣いてとっくに逃げ出してたのかな。 「お察しの通り。藤真とは偶然街で出会しただけよ。彼ったら他人行儀に律儀な挨拶だけして、急いでるからってさっさと行っちゃった。電話したのは……そうね。つい、懐かしくて」 「本当に……それだけ?」 「……まだ、愛してるから……なんて、つじつま合わせしたってしょうがないでしょ?」 「うん。例えそれが本当でも……、絶対に譲らない。」 大きく頷いた私を見て、柊子は呆れたように目を細くして笑った。
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