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「……つか、なんで柊子?」
と、冷静を取り戻した様子の藤真が顔を上げ真っ直ぐに私を見た。
その瞳には少し不安の色も窺える。
そりゃあ、そうか……。
いくら長い年月が経とうとも、過去の記憶は突然消えたりしないんだから。
「柊子……元気そうだったよ」
「知ってる。昨日、偶然会ったから」
「本当に偶然?結婚式に遅刻してまで何処に行ってたのかしらぁ……?」
でもね、私思う事があるの。
沢山泣いて、沢山悩んで苦しんで……
その全てのおかげで……
今日の私がいるんじゃないかなって。
だから、柊子と腹を割って話せた事。
……本当に嬉しかった。
「はぁっ?何だよ、ソレ。仕返しのつもりかっ……。だから、昨日は……いや、それは向こうに帰ってから話す。とにかく、来い」
ハァッとため息をついた藤真は私の手首を掴み体を反転させると、いそいそと革靴を脱いだ。
「さっさとしろ」
「えっ……何、急にっ……」
お説教中には気がつかなかったけれど、私を見下ろす今の彼は何故かスーツ姿。髪も後ろに流し整えて……まるで今から仕事にでも出勤するみたいな身なりだ。
もう、帰るだけだっていうのに……。
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