第2章

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「とりあえず、せっかく来たんだし、少し聞いていくか。」 制服姿だとまずいといういうことで、須賀さんのジャケットを借りて、フロアの一番後ろに立った。 ほとんどの観客は前の方に固まっていたけれど、後ろの方は、一人で参加している人たちが、思い思いの場所で音楽にのっていた。 今出ているバンドも、そう悪くはない。 たぶん、この中でだったら、俺の腕でも十分やっていける気がする。 だけど。 そんなモヤモヤした気持ちが顔に出てしまっていたのだろうか。 「きみ、一人?」 見るからに、社会人っぽい女の人が近寄ってきた。興味津々な顔で、舐めるように見る。・・・肉食系女子ってやつか? 「いえ、知り合いと一緒です。」 嘘だけど。 あえて無愛想に言って、その場から離れようとしたのに、その人は俺の腕を掴んだ。 「何、逃げないでよ。お友達も一緒にお姉さんたちと一緒に飲まない?」 一人じゃなかったのか。
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