andante

第3章

振り返ると、ヨージが瀬尾と話している姿が目に入ってきた。

「なんだよ、ヨージ、瀬尾ちゃんと、仲良さそうじゃん」

シノを羨ましいと思ったけれど、二人のその姿も羨ましくて、思わず、ヨージにちょっかいを出してしまう。

そんな俺たちを見て、楽しそうに笑う瀬尾の笑顔が、少しだけ奏多さんのそれとダブって見えた。

「じゃあ、そろそろ、俺たち帰ります。お先に！」

シノがさっそうと出口に向かいだしたので、後をついていく。

奏多さんは、瀬尾のそばにいるのはわかっていても、振り返らない。振り返れない。

出口に一歩踏み出すと、熱気が俺を押し戻そうとする。

そして、うんざりするような黄色い声も。