一途な執着

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「お前も飽きないな」  色褪せた写真がぽろぽろと朽ちていく。セピア色の思い出は、擦り切れて消えて行ってしまう。最後に残るものは、微かな名残りだけ――……。 「飽きないよ」  持ち上げた瞬間に、風化して溶け消えていく記憶の欠片。映し出された風景に懐かしさが込み上げる。 「別のヤツを選ばれても待つのか。馬鹿だな」 「うん、そうだね。馬鹿みたいでも『ずっと待っているから』って約束したの」  側にいたいと願った。  離れたくないと思った。  それでも、自分にはどうしようもない別れはやってくる。悲しかったし、寂しかった。彼も同じ気持ちだったと信じている。 「……別のヤツと結婚してもか」  困ったように眉根を下げて、少女は「意地悪ね」と瞳を伏せた。そして、苦笑をもらすと相手を見つめる。 「それでも、待つって決めたから」  まっすぐな言葉は一途にも思えるが、重い響きを持つ。恋と呼ぶには重すぎて、愛と呼ぶには深くて自己満足な気持ちが見え隠れする。  約束だからと押しつける様子がないのがせめてもの救いだろう。しかし、たったそれだけに縋りつき、待ち続けるのならば執着と言ってもいいものだ。どこかで元の意味を変えて、歪んでしまう可能性がある。 「――それに、別の人と付き合ってもいいって口にしたのは私」  彼が選んだのなら、別にかまわなかった。心がずきずきと痛みを訴えてくるけれど、それが彼の幸せに繋がるのなら問題ない。
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