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私はステージでマイクを持っている。
何をするのか?
歌うのだ。あの人のために。
そしてこのバンドの解散のために。
周りには私が集めた仲間がギター、キーボード、ベースを持っている。
そういえば、あの人はドラム叩いていたな。
力強い音を出していた。
もう一度聴きたいけど、彼はもういない。
名前もそこそこ売れている。
私たちはその場で二個の歌を歌った。
「それではみなさん、これが私たちの最後の曲であり、最後の新曲です。今は亡きドラマーであり、私たちの仲間であり、そして唯一の私の恋人でした。そんな彼が病で亡くなってしまいました。私たちは彼を含めて五人じゃないと私たちのバンドではないと思い、解散を決断しました」
ステージの周りで涙を流すお客さんたち。
一番泣きたいのは私の方よ。
でも、最後ぐらいは笑って終わりにしたいよ。
だから……。
「私たちは彼をずっと待っているからこの歌を歌います。そう、ずっと待っている。では、聴いてください、私たちの新たな導きを示す私たちの新曲、『涙歌待人』……」
「ちょっと待てよ?」
私はこの声に聞き覚えがあった。何かが聞こえる。
後ろを見た。
スクリーンが下ろされる。
映像が映る。
「えっ……」
私は思わず声を出してしまった。
そこには亡くなった彼が映っていた。
「この映像を見ているってことは俺が死んだんだな。よかったー。お前らにこれ渡して置いて。死んだら何も言えないもんな。おい、お前ら、ちゃんとこれ野乃子に見せろよ。どうせなら、ファンにも見せてくれよ。岩井、夏下、川根……そして野乃子。さらにファンのみなさん……」
私は周りにいる男三人を見る。
親指を立てて笑顔でこちらを見ている。
「俺にとってみんな仲間であり、家族だ!!そんな仲間であり家族である者たちにこの曲を贈ります!!……と言っても俺しかいないけどね。では、聴いてください、『最高の仲間たちに届ける歌』」
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