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「わからないの」
彼女はそう言った。
友人に誘われてチョコレートを作ったものの、誰にあげればいいのかわからない、と。
わからないから、ここでずっと考えていたらしい。
「ちなみに、俺は2つもらった」
「聞いてないよ」
彼女は口を尖らせ、
「母さんと姉貴で2つだ」
「だから聞いてないって」
彼女は口元を緩める。
「なんなら、俺がもらってやろうか?」
「な、何で、あんたに?!」
彼女は慌てて立ち上がり、
「甘いの好きだから」
「……何よ、それ……」
彼女は肩を落とす。
「で、くれるの?」
「……ダメ。あんたの事、好きかわからないから」
彼女は視線も落とし、手の中のチョコレートを眺める。
もっと気楽に考えればいいのに、いつだって真剣だから放っとけない。
だから俺は歩きだす。
「こういう始まり方があってもいいんじゃねぇの」
彼女のチョコレートを、彼女の手ごと手に取って。
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