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「藤堂くん、私にずっと本気だったってホント?」
抜け殻になってる場合じゃなかった。
目の前のこいつにわからせなきゃ。
「ホントもホント。おまえを好きだって気づいた時には社内恋愛は無理なんて宣言した後で。そうこうしているうちに藤田課長と付き合い出したって先輩から聞いて、手が出せなくなった」
「だって、私、課長と付き合ってるなんて一言も言ってないよ?」
「社内恋愛だから隠してるのかと思った」
「私をずっと好きだったって言う割には、彼女がいたよね? ひっきりなしに」
ジトっと睨まれて、目を泳がせた。
「あー、まあそれは……男の下半身事情って奴で」
「最っ低……」
まあ、そうなるわな。
「でも、おまえが彼女になってくれたら、他の女はいらないから」
「当たり前でしょ⁉」
「だから、レナ。俺と付き合ってくれ。愛してるんだ」
「悔しい」
「は?」
悔しいって何だよ。普通そこは『嬉しい』だろ?
「私だってずっと好きだったのに。バカ課長のせいで、藤堂くんが他の女たちにいいようにされてたなんて悔しい」
「これからはおまえだけが俺をいいようにしてよ。でもって、俺もおまえを好きなようにする。いい?」
コクンと頷いたレナを抱き締めようと手を伸ばした。
「あ、一つ聞くけど、私と結婚する気ある?」
いやいや、今、告白したばかりだぞ?
手も繋いだことがないのに、一足飛びに結婚か?
「ないんだ?」
冷ややかな目に焦った。
やっと手に入れたっていうのに逃げられてたまるか。
ないことはないんだ。ただ……。
「まだ覚悟が出来てないだけ」
「私はとっくに出来てる」
その一言でレナの愛の深さを知る。
今までどんな思いで俺の彼女の話を聞いていたのか。
他の女からのチョコを俺に食べさせないようにして。
もしかして、ムチャクチャ俺に惚れてるんじゃないか?
「藤堂くんに覚悟が出来るまで、私……」
ジワジワと歓喜が湧き上がってくる。
「ずっと待ってるから」
目を伏せたレナの顔からメガネをそっと外した。
「俺の方がそんなに待てない」
ゆっくりと唇を重ねて、甘いレナを味わった。
END
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