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「もうすぐホワイトデーだね。私、今度はカニ料理の店がいいな」
やっぱりそう来たかと紗綾の顔を見ながら、心の中でため息を吐いた。
今週末にでも店の予約を取って、プレゼントを買いに行かなくては。
「何か欲しいもの、ある?」
紗綾の好みなんて興味ないから、何を欲しがっているかなんて全然わからない。
「前に見たCOACHのバッグ」
事も無げに言ってくれるけど、あれって十万三千円だったよな?
十万超えのバッグと一人一万のカニ料理と。
この女にそんなに金をかける価値があるのか?
こうやって金の事ばかり考えてしまうってことは、もうアウトだってことだ。
こいつにはもう金も時間も体力も費やしたくない。
「そうか。じゃあ、別れよう」
ニッコリ笑った俺に紗綾が絶句した。
女との別れなんていつもこんなものだ。
結局は、お互い飾り物だってだけ。
紗綾にとっての俺は連れ歩くのに自慢できる見栄えのいい男。尚且つ、収入もそこそこあって、セックスも上手い。
俺にしてみたって、紗綾は隣にいて恥ずかしくない程度で、ヤりたい時にヤらせてくれる女ってだけ。
過剰の要求をされた時点で終了だ。
俺はこんな風に長くて三~四か月で女を切っているのに、どうしてレナと藤田課長は三年も続いているのか。
腹立たしいが答えはわかっている。
あの二人は愛し合っているから。
大っぴらにしないのは上司と部下が肉体関係にあるのが不適切だから。
そんな秘密の関係が刺激になって長続きしているのかもしれない。
二人の仲をぶち壊したいのに、どうすればいいのかわからない。
タイムリミットが近づいているのに。略奪って、どうやるんだ?
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