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最後に残った一世帯もご主人が病気で亡くなり、とうとう誰も住まなくなったという話だ。呪われた土地として、買い手はつかず、とうとう全ての家が廃墟となってしまったのだ。
その廃墟につくや否や、ミカが震えだし、ここヤバイと言い、自分は車に残ると言い出した。そのかわりに、ゆきりんが、こわあ~いと言いながら、タカポンの腕にしがみつきぶら下がってきた。いい年してよくやるわ。私は呆れた。必然的に、私の隣は、あれほど会うことを熱望したアキラとなるわけだ。廃墟全てを回ったが、中は荒れ果てて、地元の人間によって、スプレーで落書きをされているわ、ゴミは散らかっているわで、全く霊的なものは感じなかった。ただ、最後に回った家のテーブルに、何故か真新しいヨーグルトの容器がテーブルに置かれていた。
結局、廃墟には何も無かった。
ボーッとしていると、タカポンがこっそりと私の手を握り、何かメモを手渡してきた。この後、二人きりになりたいと。タカポンが、若いミカではなく、私を誘ってきたことがまんざらでも無かった。
最後に、アキラが持って来たドローンで夕闇迫る七つの家を撮影して、車に乗り込んだ。駅でそれぞれ、解散ということになったが、ゆきりんは未練がましく二次会へ誘ってきた。だが、カーシェアの時間オーバーになるからと、その場ですぐに解散となった。そして、私とタカポンは用事があるからと、電車のゆきりんとミカ、アキラを見送った後に、そのまま車でホテルへと向かい、男女の関係になった。私達は、その日から遠距離恋愛の恋人同士のように、夫の目を盗んで連絡を取り合った。
ある日のこと、携帯電話が鳴ったので、タカポンからだと思い、静かに夫の側を離れて、別の部屋で電話に出た。しかし、その相手は意外な相手だった。
「もしもし~、すみません。カーシェアリングの〇〇と申します。」
「あ、はい。なんでしょう?」
私は、もしや、傷でもつけたのかと不安になった。
「あのお、困ってるんですよ。あれから、お客様がご使用になったあの車を後で借りられた方から苦情がありまして。」
「え?何かあったんでしょうか。」
「お客様、あの車で、どちらに向かわれましたか?」
私は怪訝に思った。
「ど、どうして、そんなことまで言わなくてはならないんですか?」
「信じていただけないかもしれませんが、車内に出る、って言われるんですよねえ。」
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