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寒空の下、俺はある所に向かっている。
幼なじみに呼び出されていたからだ。
隣の家なのに呼び出す意味わかんねぇーし
俺は悪態をつきながらも、待ち合わせ場所に急いだ。
吐く息が白い。
待ち合わせ場所に近付くと、階段に座っている幼なじみの背中が見えた。
「お待たせ~」
少し手前から走るのを止め、のんびり歩いて近付いて行く。
振り返った幼なじみの顔はほんのり紅潮していた。
「おっそいよ!」
遅いって急にこんな所に呼び出す方が悪いんじゃね?
わざわざ来たのに怒られるとかってさ…
文句を言いたいのをぐっとこらえ、幼なじみの隣へ座った。
すると幼なじみは立ち上がり歩きだす。
俺は訳がわからず振り返ると、顔に衝撃が走った。
「いってぇ」
「待ちくたびれたから帰る!」
顔を押さえていた手を取ると、地面に綺麗にラッピングされた箱が落ちていた。
今の衝撃はこの箱がぶつかったようだ。
拾い上げると、箱にはメッセージカードが付いていた。
『いつも素直になれなくてごめん』
今日はバレンタイン。
幼なじみから日頃のお礼なのだとわかり、少しガッカリした。
いや、ほんの少しだけだ。
俺は幼なじみを追いかけ、少し後ろを歩く。
縮まりそうで縮まらない俺達の関係。
でも、俺が気が付いていなかっただけ。
メッセージカードの裏に小さく『好き』と書いてあるのに気が付くのはまだ先の事…
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