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ごめんな、と謝る先生の瞳は…
どこか寂しげで、切ない色を宿している。
私は先生に、こんな顔をさせたかったわけではない…
私は先生に、謝って欲しかったわけではない…
私は…先生に…
ただ…
『先生っ!』
膝の上でギュッと握りしめた拳。
『ん?』
その勢いに少し驚いたように瞬きをする。
『あのっ、最初はそうだったとしても…』
『えっ?』
『あのっ、ここに来た理由が、最初は軽い気持ちで、卒業のためだけだったとしても…』
『………』
『あのっ、今は…?』
『………』
『今はどう思ってるんですか?』
『えっ…』
『先生にとっては、教師は、やっぱりただの通過点にしか、過ぎないの?』
『………』
『教えて…下さい…』
『今は……違うよ……教師という仕事を、重く、受け止めている……今、ここで、こうして……、春川さんと向き合って、少しでも君の言葉を聞くことができて……本当に良かったと思ってる………』
『っっ……』
涙が溢れた。
『教師になれるかどうかはわからないけど……春川さんや、クラスのみんなに、出会うことができて……本当によかったと思っているよ、』
『ううっ……』
嗚咽を堪え、零れ落ちる涙を手の甲でグイッと乱暴に拭う。
『先生、』
『ん?』
『私はっ、私は先生に向いてると思うよ』
『えっ…?』
見開かれた先生の瞳。
真っ直ぐに見つめ返し、心こめて言った。
『先生に会えてよかった♪私…、また、いつか…先生に会いたい、』
『………』
『本当の先生になった先生に、会いたい…』
『それって……ある意味殺し文句だよね…?』
困ったように肩を竦めた先生。
『私…ずっと、待ってるから…』
何を…
とは言わずに、そう告げた。
その言葉の意味を先生が、どう捉えたのかはわからない。
でもきっと……、
一年、いや、二年後には、また再会できるだろう。
そんな奇跡を願って、
私は心の中で呟いた…
先生、好き……
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