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「戦争で世界が滅ぶ…そんなことがあるのか?」
慎哉が神妙な面持ちでそう聞く。
ラファエルは頷くとまた話し始めた。
「この世界は魔素で満たされている。けれどその魔素が戦争により大量に使われることになる。それによって魔素が枯渇すると、何故か世界が破滅するらしいの。そこらへんの理由はこの世界の技術力では分からないのだけど…。」
慎哉は少し考え込む。そして一言呟いた。
「…クーロン力」
「えっ?」
突然の慎哉の呟きにラファエルはきょとんとする。
「この世界はクーロン力を魔素と言い換えているのかもしれない。だとすると…。」
一人呟きながら考え込む慎哉の様子をラファエルはただぽかんと見つめる。
「…もしそうなら、本当にこの世界は終わるかもしれない。超新星爆発によってな。」
「…何を言っているのかさっぱり分からないわ。」
ラファエルが頭を抱えると慎哉はそうか、と言って説明を始める。
「まず、クーロン力っていう、俺達が動いたり、存在する為に必要不可欠なエネルギーがあるんだ。この世界ではそれの代わりを魔素が果たしている。だとすると、クーロン力がもし無くなってしまった場合、物でも世界でも、形を保てなくなる。だから、魔素を使い果たすと同じことが起きる。つまり、戦争が起きて魔素を使い果たすと、この星が爆発四散するかもしれないってわけさ。」
ラファエルは暫く慎哉の説明を咀嚼すると、やがてなるほど、と呟いた。
「仕組みは分かったわ。でも、解決策がないと…。」
慎哉はそうだよな…と呟くとうーんと唸る。
「まあ、そんなことは今はどうでもいいの。」
「えっ?」
ラファエルの言葉に慎哉が少し拍子抜けした声を出す。
「それよりも今は、貴方の話が聞きたいわ。」
その言葉に慎哉は苦笑した。
「俺の話は糞つまらないから、覚悟しろよ。」
そして慎哉が語りだし、こうして夜は更けていった…。
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とある街のアパートで、一人の幼い少年が両親の帰りを待っていた。
黒髪、黒目、特に変わったところはなく、特徴もない、ごく普通のまだ可愛いげのある少年。
彼の名前は橘 慎哉。この時7歳だった。
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