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そして変装をとき裏道に入って一息ついた彼。
懐から先程盗み出した宝石、レジェンドルビーを取りだし一瞥するとまた元の位置にしまいこみ、このレジェンドルビーにまつわる伝説について考え込む。
「異世界に通ずる扉…か。」
そう呟いて、歩き出そうとした時だった。
彼の視界を、眩い光が覆った。
「な、なんだ…!!?」
やがて光が収まり、彼は薄目を開けて辺りを確認する。
そして一見問題が無さそうなことを確認すると目を完全に開けた。すると…。
「なんだよ…これ…」
目の前の光景が歪んでいた。後ろを振り返ればそれは先程通った普通の道で、普通に見える。
いくら目を擦っても頬をつねっても、目の前の光景の歪みは元に戻らない。
そして、彼はある伝承を思い出した。それは、このレジェンドルビーにまつわるものだった。
レジェンドルビーはとある国の産業革命時代にどこからか見つかった宝石だという。その当時は第二次囲い込みという政策が行われ、農作をするうえで画期的な方法だったことから、その国は栄えた。しかし農作物を持ち出す手段がなかったので、急ピッチで蒸気機関車などの公共機関の作成を急ぎ、やがてそれが完成すると貿易は盛んになった。
そう、そんな時だった。ある商人同士の取引によって、かの国にレジェンドルビーが持ち込まれたのだ。だがレジェンドルビーは当時価値はなく、レジェンドルビーを買い取った商人の子孫達へと、代々受け継がれ、いろいろありながらも奇跡的に現代にまで残っているのだという。そしてそんな一族の間には、奇妙な噂が囁かれていた。
その一族の間では、何年または何十年かに一度、人が消えているのだという。しかもそれは、一族がレジェンドルビーを手にしてからだという。消えた人達は異世界に飛ばされたのでは…。そんな噂が流れ始めていた。
恐れた一族は、レジェンドルビーを知人から知人へと流していったのだとか。しかし、それからは人が失踪することはほとんどなく、レジェンドルビーによるものではないという説もある。
しかし不思議な輝きを放つその宝石は、未だに伝説として語り継がれている。故にレジェンドルビーなのだ。
だから今起こっているこの現象は…。
彼はそこまで考えて頭を振った。
そんなわけはない。でも……。
「異世界なんてもんがあるなら、喜んで行ってやる。」
彼は歪みに手を伸ばした。
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