プロローグ それは異世界へのゲート

6/7
前へ
/45ページ
次へ
そしてふと我にかえった彼は考え出す。 さて、どうしたものか。 この世界でも怪盗をするのか、それとも普通に暮らしてみるか。 いや、普通に暮らすなんて面白くない。 やはり怪盗をするしかない。 そう考え出すと彼の興奮は止まらなかった。 わくわくしすぎてどうにもその気持ちは止められない。 彼の頭が高速で回転し、次の展開を考える。 まずは情報収集だ。何も知らないことには何も始まらない。 ここは何なのか、どんな世界なのか。そして何があるのか。 「さあ、ここからが本番だ…。」 彼は両手を大袈裟に広げ声高らかに叫んだ。 「Ladies and Gentleman!!It's show time!」 そう、ここがやっと始まり。彼を主人公に、楽しいショーが始まるのだ。一度も失敗は許されない。 本物の人生を賭けた彼のショーが、今始まる。 ―――――――――――――――――――― 異世界ベルモンガルド 大陸アルハトッテ シルスーン共和国 首都 タリベット 首都タリベットにある城から、一人の少女が抜け出し大騒ぎになった。 彼女はこの国に天界から召喚された所謂勇者だった。 天界人である特徴の美しい金色の瞳に、今は周りに見えないように施してある毛並みの良いふわふわの羽。 そして彼女の容姿は天界人の中でも一二を争うであろう程に美しい。髪はクリーム色のロングヘアー。腰までかかる程だ。それが月の光を反射し更に彼女を美しく見せている。 城下町の人々は皆彼女を見て呆然と固まっている。 そして逃げる彼女を城の兵達が追いかける。 しかし流石は勇者。彼女の走る早さは尋常ではなかった。なにか魔法を使いそれの力を借りて走っているようだが、同じく魔法を使い走る兵達をどんどん引き離していく。 やがて兵達は彼女を見失い、その場は撤退したのだった。 それを見た彼女はほっと一息つくと、後ろを振り返り、次の瞬間きゃっと小さく叫び尻餅をついた。 そんな彼女に手を差し伸ばしたのは…。 「大丈夫ですか、お嬢さん?」 怪盗チャップリンこと、橘 慎哉だった。 慎哉の様子にとりあえずの安堵をした彼女はお礼を言って彼の手をとり立ち上がった。 「ありがとう、あなた紳士的ね。」 彼女はそう言って微笑む。 慎哉はただどういたしまして、と言って手を離す。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加