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彼女から手を離した慎哉は顎に手を当て何やら考え事を始めた。
「どうしたの?何か考えているようだけど…」
彼女も慎哉の様子に疑問を抱き、そう聞いた。
「いや、2つほど貴方にお尋ねしたいことがありましてね…。」
慎哉は少し間を置くと更に言う。
「お嬢さん、何かお困りですか?」
「えっ?」
彼女はそのいきなりの質問に驚く。
しかし気を持ち直すと今度は彼女が慎哉に問うた。
「何故そう思うの?」
彼女の問いに慎哉は少し微笑むと、種明かしを始める。
「簡単なことですよ。私は旅の者なのですが、先程町の入り口が封鎖されていたお陰でこの町に入れなかったのでね。最初はそういう町なのかと思いましたが、裏道からこの町に入るときに、何かを追いかける兵達を見かけまして。興味本意で私も先回りしたところ、貴方と出逢った。そこから貴方が何か訳ありなことは容易に分かりますよ。」
静かに慎哉の話を聞いていた彼女はなるほどとクスッと笑った。
「貴方も普通の旅の方では無さそうね。裏道とか先回りとか、普通の人ならしないわ。」
それと、と彼女が付け加える。
「そのキザな話し方、やめてもいいのよ?」
慎哉はそれを聞くとこれは参ったなと苦笑し、改まった態度をやめると再び手を差し出した。
「じゃあ改めて、俺は怪盗チャップリン。よろしくな」
彼女は慎哉の挨拶を聞いて少し吹き出す。
「なるほど、キザな怪盗さんって訳ね。よろしくチャップリン。私はラファエル、天界人よ。」
彼女はそう言って慎哉の手をとり微笑んだ。
慎哉といえば、なるほどこれが本物の天使か…と若干意識がピンク色になりかけたところで我にかえりこほんと咳払いするとラファエルに第二の質問を投げ掛けた。
「ところで、ここはどんな町なんだ?」
ラファエルはそれを聞くと首をかしげ
「私も分からないわね…」
二人はこの世界に来たばかり。二人の旅もまだまだ始まったばかり。いや、まだ始まってすらいなかった。
「じゃあ、ひとまず二人で情報収集でもするか?」
慎哉の誘いにラファエルは頷く。
「そうね。貴方には、暫くの間お世話になりそうね。ほら、早速…」
彼女はそう言って後ろを指差す。
慎哉はこちらに走ってくる兵達を見て苦笑すると彼女の手を引いた。
「行くぞ!」
こうして、二人での旅が始まったのだった。
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