第一章 盗るものと盗られるもの

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そんなベルモンガルドには、五つの大陸があり、人々はその五つの大陸に分かれて暮らしている。 その1つがアルハトッテ、残るは魔導文明が最も進んでいると言われるミルヘルシア、そして武器にそれぞれの特徴があるものが多く生産されるタングリラ、そして魔導と武器の両方の扱いに長けた者が多いと言われるテクナアリス、そして最後は様々な種族が共存して暮らしていることで有名なシーレトルン。 更にこの世界には様々な種族が存在する。 道具を使うことで文明を進めてきた人間。 魔導を人間に教えたといわれている精霊。 武器を作ることに長けている矮人。 全ての種族を生み出したといわれる天界人。 主にこの四種族からなる。 そしてそんな構成であるこの世界は今脅威に脅かされ始めている。そこで天界人であるラファエルがこの地上に召喚されたらしい。 「で、その脅威って?」 一通り世界についての説明を聞き終わり暫くはあれやこれやと想像を膨らませていた慎哉が我にかえり問う。 「ここからは私の話になるわね。さて、私も話したいのは山々なんだけど、喉が乾いてしまって…」 慎哉はそれにああ、と納得すると立ち上がった。 「じゃあ川の水を汲んでくるよ。」 慎哉が小屋から出ていこうとすると、ラファエルもついていき言った。 「見たところ水を汲めるものを持っていないじゃない。グラスを生成するから少し待って。」 そのラファエルの言葉に慎哉は目を見開く。 「グラスの生成なんて出来るのか?」 驚く慎哉にラファエルはふふっと自慢気な笑みを浮かべると彼女の手に何かが集束していき、それが形を織り成す。 やがてそれはグラスの形になり、ラファエルの両手にはそれぞれ一つずつグラスが握られていた。 「すっげえ…」 呆然と固まる慎哉にグラスを一つ手渡すとラファエルが彼の背中を押し扉を開ける。 「ぼうっとしてないで、行くわよ。」 クスッと笑いながらラファエルは楽しそうに小川へと駆けていった。 ―――――――――――――――――――― 「さて…」 水が入ったグラスをテーブルの上へ置くと、ラファエルが改まって自分がこの世界に来ることになった経緯を話し始めた。 「結果から言うとこの世界は…種族間戦争がきっかけになって、滅ぶ運命が待ち構えているわ。」 その言葉に空気が張り詰めた。
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