30人が本棚に入れています
本棚に追加
プロローグ それは異世界へのゲート
「よっ…と!」
「待てぇぇぇぇぇ!!!!今日こそは逃がさんぞ怪盗チャップリン!」
一人の真っ黒な服にシルクハットを被った男が、何百という数の警官に終われている。その警官達を率いる男、桐谷 省吾は今夜もまた、怪盗チャップリンに弄ばれていた。
「全く、我が国の警察はワンパターンだからいけないよ…全く。助言しても改善しないしな…。溜め息が出るねぇ…。」
怪盗チャップリンは言いながら溜め息ではなく嘲笑している。彼の目は今とても楽しそうに輝いていた。
――――――――――――――――――――
翌日
「またかね…桐谷君…」
「は、はあ…申し訳ありません、警部。」
深々と頭を下げる桐谷とそれを見てまた溜め息をつく警部。室内には何とも言えない空気が充満していた。それには諦めが交じっているようにも見られる。
警部は持っていた新聞記事を机に投げ捨てる。
その見出しには大きく、『怪盗チャップリン、またも華麗に盗み出す!!』と書かれ、怪盗チャップリンが優雅に空を飛び逃げ去る写真が掲載されていた。
「このままでは、我が国の警察の信用にも関わる。いいかね桐谷君。今夜こそは彼を捕まえてくるんだ。」
「今夜…と申しますと…?」
桐谷は嫌な予感がしながらも下げていた頭を少し上げ質問する。
「今夜19時に、伝説の秘宝『レジェンドルビー』を頂きにモルセーヌ美術館に参上する。レジェンドルビーを奪われたくなければ、今まで私が施した助言を参考にして全力で止めにきたまえ。諸君らの奮闘を期待する。そして今宵も優雅に華麗に美しく、漆黒が世界を魅了せんことを。怪盗チャップリン……という私達に対する挑戦状が今朝私の机の上に置いてあったのでね。」
警部は顔をしかめながら言った。
机の上には他にも何か怪盗チャップリンの嫌がらせがいつものようにあったのかもしれない。
「な、なるほど…。では、モルセーヌ美術館に直ちに確認をとり警告し、捜査及び厳戒体制を敷きますので、お手数ながら……」
桐谷が言葉の続きを言う前に警部がそれを手で制する。
「分かっている。それに必要な書類やらは私がまたしておく。君は部下を指導し、今夜こそ怪盗チャップリンを捕まえてくるんだ。」
「はっ!!」
桐谷は気合いの入った敬礼をし、頭を下げるとその場を去った。
最初のコメントを投稿しよう!