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「どうした、香織!」 「圭佑・・・!これ、見て」 顔を上げた彼女の両目から、頬を伝うように一筋の赤い跡が通っていた。 それはまるで、血の涙を流したかのようだった。 彼女の顔を綺麗にして一先ず帰らせることにした。 この部屋にいてはまた何か起こる気がして・・・。 数日後、香織に呼び出された。 昼休みに大学の図書館へ。 学生証がないと入れないこの図書館は無駄に種類が豊富だ。 4年間かけても全てを読破することはできない。 まあ俺には一冊も読破する気はないけれど。 片手で数えられる程度しか通っていない入り口を抜け香織の元へ向かう。 「お待たせ、香織」 こちらを振り向き笑顔で答えるがどこかぎこちない。 「どうしたの?」 「・・・うん。えっとね、話しておきたいことがあるの」 こんなに神妙な香織は初めて見る。 嫌な予感が過る。 「私ね、お姉ちゃんがいるの」 「ほぇ?」 予想外の告白に拍子抜けして変な声が出た。 「そ、そうなんだ。羨ましいなぁ。俺は一人っ子だから。一緒に住んでるの?」 すると香織は押し黙った。
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