第1章

3/5
前へ
/5ページ
次へ
「拓斗…。」 そう呟いてみるが‘サァー’っと風の通りすぎる音しか聞こえない。 「なんで別れちゃったんだろ…。 拓斗、わたし…わたし、拓斗の事待っててもいい?」 空に向かって呟く声は空へと掻き消される。 「ずっと…待ってるから……。」 そう、そっと呟いた。 すると後ろから 『美優…?』 その声にドキッとする。 まさか…嘘でしょう? わたしの名を呼ぶ愛しい人の声。 振り返るとそこには… 「拓斗…。」 まさか、こんなところで会えるなんて運命!? …なんて夢物語を語れる状況じゃなかった。 「あっ…」 言葉に詰まる私に拓斗は言う。 『あ…奥さん、それからこども。去年産まれたんだ。』 『初めまして。』 優しく微笑むその女性は赤ん坊を抱きながらペコリと会釈をした。 『こちら同級生の清水美優さん。』 同級生だなんて… そりゃそうか。 奥さんに‘元恋人’だなんて紹介出来ないよね。 拓斗の紹介に胸が苦しくなる。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加