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「拓斗…。」
そう呟いてみるが‘サァー’っと風の通りすぎる音しか聞こえない。
「なんで別れちゃったんだろ…。
拓斗、わたし…わたし、拓斗の事待っててもいい?」
空に向かって呟く声は空へと掻き消される。
「ずっと…待ってるから……。」
そう、そっと呟いた。
すると後ろから
『美優…?』
その声にドキッとする。
まさか…嘘でしょう?
わたしの名を呼ぶ愛しい人の声。
振り返るとそこには…
「拓斗…。」
まさか、こんなところで会えるなんて運命!?
…なんて夢物語を語れる状況じゃなかった。
「あっ…」
言葉に詰まる私に拓斗は言う。
『あ…奥さん、それからこども。去年産まれたんだ。』
『初めまして。』
優しく微笑むその女性は赤ん坊を抱きながらペコリと会釈をした。
『こちら同級生の清水美優さん。』
同級生だなんて…
そりゃそうか。
奥さんに‘元恋人’だなんて紹介出来ないよね。
拓斗の紹介に胸が苦しくなる。
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