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「ずっと待ってるから…」
溜め息とともに漏れた呟き。
それは今日だけで何度繰り返されたことだろう。
俯くと膝の上に乗せた拳に力が入るのが目に映る。
「待つのがこんなに辛いなんて、知らなかったわ。今までは二日と空けずに…」
音沙汰がなくなってから一週間。
夫を、ただひたすら待つだけしかない平安時代の妻の気分はこんなものだったのだろうかと馬鹿馬鹿しい想像にふけるのは、費やした時間を無意味にしたくなかったからかもしれない。
しかし、そろそろ待つだけの日々にも疲れてきた。
それだけではない。
ただ、むやみに待っていたわけではないのだ。思いつく限りの努力をしてきたのだ。
それなのに、訪れる気配さえ見せないとは一体どういうことなのか。
労力を無駄にされた気がして悔しさがこみ上げてくる。
もう、いっそのこと…
足元の紙袋に視線を落とす。
そこには、呼び寄せる最強の武器が納められていた。
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