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俺は走った。
三年の教室の前以外は走った。
階段を思いっきり踏み外し、大事な部分を強打しながらも、走った。
途中、廊下を並んで歩いているけしからん女子達に小声で注意し、走った。
渡り廊下の小さな塀をハイジャンプしながら、俺は走り抜けた。
途中、何も無いところで転んでみたりして緊迫感を出してみた。
そして、叫ぶ。
その方が緊張感があるかなって。
「俺は、俺は焼きそばパンのことが好きだ―!」
出ていない血を拭う素振りをしながら、何故が大ダメージを受けてふらふらな設定で走る。
彼女に逢う為に。
「せんせー、また授業が長いからって恋人に逢いに行く設定であいつが消えたんですけど」
パタンと教科書を閉めると、先生は飛行機雲の亀裂を見上げて鼻で笑った。
「ふふふ。彼女がずっと待っているのは、本当は俺なのにな」
「は?」
「いや、それはまた、別の話で」
そう言うと先生はパンを買いに走った。
彼女の為に。
完
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