第1章

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彼―――紺野夏樹くんを好きになりました。 きっかけは9月。 2学期が始まってすぐのこと。 図書室でのことだった。 もう彼は覚えてもいないだろうけど。 彼に一番高い棚の本を取ってもらったのだ。 横着して、目一杯背伸びしても届かなかった一番高い棚。 彼はちょっと手を上げただけで簡単に届いてしまう。 「これ?」 確認されて、うなずくことしか出来なかった。 きっかけとしては何でもないことかもしれないけど、私にとっては十分な出来事だった。 紺野くんは基本的にみんなに優しい。 困っていた子が私じゃなくても助けたんだろうなって思ったり、それがちょっとやだなって思ったときには、もう好きになっていたんだと思う。 彼女にはもっと優しいのかな、どんな特別な笑顔を見せてくれるんだろう、見てみたいな。そう思った。 今まで、クラスメイトのひとりだった彼が急に私のなかで存在感を増した。 気づいたら恋に落ちてたってやつです。 恋はするものじゃなくて、落ちるものなんだなって、冷静に分析したりなんかして。好きだなって思うだけで毎日がきらきらして見えた。 幸運なことに、彼の席は私の右斜め前。 授業中、気づいたら彼を見てた。 先生には、熱心な生徒に見えてたかな。 どんな退屈な授業でも、 紺野くん、眠そうだなー あ、落書きしてる! って、彼を見てるだけで時間は過ぎていった。 恋の威力は半端無いです。
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