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彼―――紺野夏樹くんを好きになりました。
きっかけは9月。
2学期が始まってすぐのこと。
図書室でのことだった。
もう彼は覚えてもいないだろうけど。
彼に一番高い棚の本を取ってもらったのだ。
横着して、目一杯背伸びしても届かなかった一番高い棚。
彼はちょっと手を上げただけで簡単に届いてしまう。
「これ?」
確認されて、うなずくことしか出来なかった。
きっかけとしては何でもないことかもしれないけど、私にとっては十分な出来事だった。
紺野くんは基本的にみんなに優しい。
困っていた子が私じゃなくても助けたんだろうなって思ったり、それがちょっとやだなって思ったときには、もう好きになっていたんだと思う。
彼女にはもっと優しいのかな、どんな特別な笑顔を見せてくれるんだろう、見てみたいな。そう思った。
今まで、クラスメイトのひとりだった彼が急に私のなかで存在感を増した。
気づいたら恋に落ちてたってやつです。
恋はするものじゃなくて、落ちるものなんだなって、冷静に分析したりなんかして。好きだなって思うだけで毎日がきらきらして見えた。
幸運なことに、彼の席は私の右斜め前。
授業中、気づいたら彼を見てた。
先生には、熱心な生徒に見えてたかな。
どんな退屈な授業でも、
紺野くん、眠そうだなー
あ、落書きしてる!
って、彼を見てるだけで時間は過ぎていった。
恋の威力は半端無いです。
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