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「で、でも…いきなりそんなこと言われても…身に覚えがないというか…。
一体、私が誰に狙われていると言うんですか」
「魔術部の南雲雨(なぐも あめ)だ」
先輩は少し苦い顔をしながら答えた。
「……あの変態魔術師として有名な南雲君?」
彼の変わりっぷりは、この蒼野先輩をも上回る勢いで、グラウンドいっぱいにミステリーサークルを描いたとか、魔術で風を巻き起こしてスカートめくりをしたとか、プールに沈んで女子の泳ぐ姿を眺めていたとか…。
主に学園一のド変態として有名だった。
「奴が君を狙っている。これはとても危険なことだ」
「確かにとても危険な感じがしますけど…。なんで私を…」
「多分、それは俺のせいだ。
詳しくは言えなくて悪いが、俺の言うことを信じてくれないか?」
「…え。…えーっと…」
先輩にそんな真剣な目で見つめられると、困ると言うか…ドキドキしてしまうと言うか…。
「…先輩の言うことが本当だとして…その…先輩は…私のことを守ってくれますか?」
「ああ。全力で守るとも」
先輩は力強く頷いた。
「じゃあ……私は先輩のこと、信じます」
そう頷いたのは正しかったのか、間違っていたのか…。
今となっては分からないが、その時の私は、先輩からその泥のような液体の入ったコップを受けとり、中身を全て飲み干したのだった。
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