1:奇人なる先輩

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『――穴があったら入りたい』 たとえば公衆の面前で派手に転けてしまった時。 人に言えないような趣味が周りにバレてしまった時。 人は誰しもそんなことを思う――。 そして、今の私も。 まさしくそんな状況に直面していた。 全校集会のあるホールに向かう途中の廊下で、 ずるびったーん、と派手な音を立てて床にスライディング…そのうえ…。 「だ、大丈夫?真夏…ってきゃ!!」 今の私は穴に入る必要はなかった。 なぜならば――。 恥ずかしくなると、不思議とこの体は透明になってしまうから。 …しかし。 「…制服だけが浮いてる!!」 透明な私はすぐさま起き上がり、その場から疾風のごとく走り去った。 「……せせせ制服が高速移動してる!!」 現場は騒然となる。 「…っていうか、今、捲り上がったスカートの向こうに赤パンが見えなかった…?」 そんな声も聞こえた気がするが、敢えて聞こえなかったことにしておこう。
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