1:奇人なる先輩

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* 「終わった…。今度こそ終わった…」 私はとぼとぼと廊下を歩いていた。 あれから教室には戻っていない。 この特殊体質になってから一週間。 体が透明になるのを察すると同時に素早くその場から姿を消すことには慣れてきつつあった。 が、やはり唐突なアクシデントには対応しきれない。 そしてついさっきも大きなボロが出てしまった。 私の歩く隣にはクラスメイトの陽子と夕日がいた…。 急に制服のみになった私を見てどう思ったことやら。 「……誤魔化し…きれるかなぁ…」 溜息とともに、目の前の教室を見上げる。 周囲から追及を受ける前に、私が逃れるようにしてやって来た先は――、 『第八化学室』 ここは学園一の奇人が住まう場所――通称ラボ。 初めてこの教室を目にした時、その奇人君に私は訊ねた。 「なんで第八?」 「えーっと、それはね。 第七までは爆破……いや、事故でなくなっちゃったんだよねぇ」 はっはっと笑って答えてくれた奇人君。 けれど幾ら笑って誤魔化したところで、私は不穏な一語を聞き逃してなどいなかった。 隣には、がらんどうの黒焦げ教室がいくつも並んでいるし。早く修繕しないのかな。 私はノックなしに第八化学室に入っていった。
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