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「もう!ほんっと、最悪!」
化学室から出てきてからしばらく、先輩に対して毒づき続け、大股でドスドス廊下を歩いていたのだが。
やがて頭が冷えてきて、歩みを止めた。
(なんで私は…)
あんな奇人な先輩のことを好きになっちゃったんだろう…。
ふと考える。
なんで、あの時、先輩のことを信じて、あれを飲んでしまったのだろう…。
何が正しくて、どうすれば良かったのか。
どうしてこうなってしまったのか。
わからない。
わからない。けれど…。
(……このまま、こんな体質のままだったら…)
この先の未来。
もしも先輩に告白して。
もしも先輩と付き合うことが出来たとして…。
その先の…手を繋いだり、ハグしたり、キスしたり…。
そんな恥ずかしくも幸せな時間に、先輩の前で透明になってしまって見てもらえなかったら…。
「……って、何、勝手に想像しているんだか…」
自分を笑いたくなる。ばっかみたい。
だって、三度の飯より実験好きなあの変わり者の先輩が私を好きになってくれるなんてことが…あるわけがないじゃない…。
「…っ?!」
――その時だった。
いきなり背後に人が現れたと思ったら、口元に布を押し当てられていた。
助けを…とか何かを考える間もなく、私の意識はあっという間に闇に沈んでいった。
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