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1日1日を、一分一秒を彼と一緒に大切に過ごした。
周りの厚意もあり、会社は休職。
彼の方も、会社でよほどの信頼を得ていたようで、「早く治して早く戻ってこい」と退職ではなく休職として、彼を受け入れてくれた。
互いにクヨクヨすることもなく、毎日病室で他愛もない話をした。
「絵美、ちゃんと家事やってるか?」
「ちゃんとやってるわよー。」
「どうだかなぁ。絵美はズボラなとこがあるから、俺がいないとすぐサボりそうだ。」
「失礼ね!たしかにズボラだけど!」
「ははっ。ズボラなのは認めるんだな。」
1年ずっとこの調子だった。
ドラマや映画でよくある、今までの思い出に浸るシーンや、改めて想いを伝え合うよな感動的な場面もなかった。
いつも通り、軽いやり取りをして、笑い合って、限られたその時間を過ごした。
彼の余命宣告は悲しい出来事だったけれど、それでも幸せだった。
幸せだけど、悲しい悲しい1年だった。
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