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「あああああ!!」
ガバッと上半身を起こし、声を上げる。
全身が冷や汗でびっしょりで、首筋を冷たい雫がつたっていた。
布団を握りしめる自分の手が震えている。
顔も汗で…
いや、汗と涙で濡れていた。
まただ…またあの日の夢だ。
2月10日(水)。
あの日、俺は急な残業が入り、約束の予定をキャンセルしようと電話を掛けたが『ずっと待ってるから』と彼女は頑として譲らなかった。
しかし仕事を終え二時間遅れで待ち合わせ場所に着いた時には、既に彼女の姿はなく、代わりに騒然とした事故現場の痕があった。
いつもの待ち合わせ場所の、駅前にある噴水の前。
その脇に座っていた彼女に、居眠り運転の車が突っ込んできたらしい。
ほとんど即死だったそうだ。
彼女の遺品のバックの中から俺宛の手紙が見付かったと聞かされたのは、それから暫く経ってのことだ。
―――2年前、いつもの噴水前で、好きって言ってくれてありがとう。大好きだよ―――
一緒に手作りのクッキーが入っていた。
なんだよ、そんなこと、いつでも、例えば次の日だって、別に良かったじゃないか。
電話で直接だって、いつだって、俺は嬉しいのに。
なんだよ…なんで…
どうすれば良かったのだろう。
あの日、どう言えば彼女はあの場を離れてくれたのだろう。
俺は毎晩考える。
あの日からずっと、後悔が消えない。
きっと俺は今夜も、あの日の会話をやり直す。
何度も、何度だって。
彼女の「ずっと待ってる」という言葉を変えたくて―――…
~END.
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