小説の書き方を、教えます

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「あの日記をいくら探しても、もう国会図書館には無いのよ……どうすればいいの?」  あの日コピーしたはずの『岡田建文 文学日記』は、図書館の記録から消えていた。 日記の後半に、この夢地獄から抜け出せるヒントがあると思ったわたしは、身も世もなく叫んだ。 「この苦しみから抜け出せるのなら、悪魔にだって魂を売るわ!」 「ずっと待っていたわ……ようこそ、これであなたも仲間ね」  六分儀恭子が天使のように微笑んだ。  そして、わたしは気づいた──彼女の眼は夢見る者のそれだと。 「教えてあげるわ……救われる方法を──」 「それは……?」 「とにかく書くしかないのよ。あなたが見た夢を、小説に書けば楽になるわ」 「それは……」  無機質な笑みを浮かべる彼女に、わたしは言葉を掛けようとして止めた。 「それはいつまで続くの?」と訊こうとしたが、その答えを聞くのが怖かったからだ。 ──『小説の書き方を、教えます』 終わり。
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