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透明人間になれば、彼女を救えるかもしれない。
しかし……その作戦をぶち壊す、最大の問題があった。
寒い!
さっきから体が震え、縮こまり、指先がかじかんでいる。
この中で……この寒さの中で……身につけている装備を全て外せだと……!?
脱衣所の比じゃないんだぞ!!
人間としての進化を、尊厳を、失うことになる!!
頭がおかしい!!
そう叫びだしかけたが、その問題はさしおいて、とりあえず警察を呼んだ。
彼女を助けるためには透明人間にならねばならない。
しかしそのためにはこんな寒さで裸にならねばならない。
いや、当然ながら彼女を救う方を選ばなきゃならない。そうだろう。
だが一層強く吹き付ける風がその心を吹き飛ばす。
しかし早くしないと彼女の身になにかあるかもしれない。
でも思ってるよりも早く警察が来るかもしれないし……
何を言ってるんだ一分一秒を争う事態だぞ。
とはいえ気温は絶対に一桁に違いないし。
そんなこといって彼女が奪われてもいいのか。
そんなこといったって裸じゃ一瞬で体温が奪われてしまう。
くそっ……!そんなこと言ってられないだろ……!
俺は……確かに寒さが嫌いだ、大嫌いだ!
でもそれ以上に暮ちゃんが好きなんじゃないのか……!?
………………行くしかない。
俺はヘルメットをとった。
そしてコートを脱ぎ、セーターを脱ぎ、シャツを脱ぎ……
寒さの前に何度も立ち止まり、脱ぎ止まったが、それを乗り越え、俺は全ての衣服を脱ぎ去った。
なんだか寒すぎて逆にテンションがおかしくなってきた。
余談だが、正義と寒さを天秤にかけるようなこんなヒーローに、もしも名をつけるなら、不名誉なこんな名がお似合いだろう───と思った。
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