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何枚か写真を撮って満足した母親は、カメラを鞄に仕舞った。
俺たちが小さいころ、母親はいつもカメラを持ち歩いていて、事あるごとにシャッターを切っていた。だから、ささいな日常の写真が沢山アルバムに残っている。
「二人ともどうしたの?琴葉ちゃんにご挨拶できる?」
「はい」
元気に頷いたのは、弟の総(そう)だった。
俺たちは一卵性の双子だから兄と弟って分けるのもおかしいが、何故か後に出てきた俺が兄らしい。
「雨宮 総(あまみや そう)です。よろしくお願いします」
きちんと挨拶をした弟に慌てて俺も挨拶する。
「雨宮 健(あまみや たける)です。よろしくお願いします」
俺たちの家は代々続く老舗の和菓子屋で、物心ついたときから礼儀作法や挨拶は厳しくしつけられてきた。
「まあ、小さいのにきちんとご挨拶出来てすごいわね」
琴ちゃんのお母さんが誉めてくれた。
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