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そんな屈託のない琴ちゃんを見たのは、あれが最初で最後だった。
次に会った時の琴ちゃんの笑顔は少し悲しいものに変わっていた。
「琴ちゃん、悲しいの?」
思わず聞いた俺に「大丈夫」って言ってくれたけど、全然大丈夫そうには見えなかった。
琴ちゃん、どうしたのかな……
その日は、ずっと琴ちゃんの事が気になっていた。
事実を知ったのは1か月後だった。
急に護身術を習うことになり、理由を尋ねたら母親が悲しそうに言ったんだ。
「琴葉ちゃんね、誘拐されそうになったのよ。だから、健も総も例え知っている人にでも付いていっちゃダメよ」
誘拐?
初めて聞く言葉に首を傾げていると、母親が説明してくれた。
「誘拐って、とっても怖い事なのよ。誘拐されると2度とお父さんやお母さんに会えなくなっちゃうの。
だから、お父さんやお母さん以外の人には付いていっちゃダメよ」
「はい」
よく分からなかったけど、とにかく怖い事だということは伝わった。
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