出会い

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そんな怖い目にあったから、琴ちゃんは悲しそうだったんだ。 きちんとした事実を知ったのは、更に数年後の小学生の時だった。 犯人は、可愛がってくれていた近所のお姉さんだった。 付き合っていた彼の借金を返したくて、お金持ちの琴ちゃんを誘拐したら楽に大金が手にはいるだろうという単純な動機だった。 娘が琴ちゃんを自分の車に乗せるのを見て嫌な予感がした母親が、娘に泣きながら電話して思い止まらせたらしい。 けれど、琴ちゃんの家では既に騒ぎになっていて犯行を隠しきれなかった。 発見された時、琴ちゃんは泣きつかれて後部座席で眠っていたらしい。 それから、琴ちゃんは悲しくても泣けなくなってしまったんだ。 だから俺は決めたんだ。琴ちゃんに二度と悲しい思いはさせないって。 初めて会った時のような笑顔を取り戻すんだって。
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