一章

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「徐州へ、出陣する」 曹操はいつも通り物静かに一言だけ命令を伝えた。 「お待ちくだされっ!」 前へ出できたのは軍師の一人、陳宮。 「心中お察し申しますが、お止まり下され。 今兵を動かせば、それは私怨。 私怨で兵を動かせば、天下の人心も殿から離れていってしまい、後世に拭いきれない汚名を残す事になりましょうぞ!」 「黙れっ!」 曹操は陳宮を一喝。 あまりに大きく激しい声色だった。 「出陣と言ったら出陣だ!」 曹操の両眼から赤みがかった涙が溢れ、 あまりに強く噛締めた唇は破れて血を流していた…
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