第1章

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「梢…そんなに悪いのか?」 すぐるが、身を乗り出して聞いてくる 「あ…いや…」 俺は、体を仰け反らせ、すぐるから離れる 「まだ、本調子じゃなくてさ…ほら、退院したばっかだから」 苦し紛れの言い訳をする すぐるは、怪しむように俺を見たが 「そっか、まだ伊豆の叔父さん家に居るのか?」 「うん…」 俺は、梢の事を言えずに隠している 武藤 梢(むとう こずえ)は、俺の双子の妹だ 双子と言っても、二卵生で殆ど似てない 梢は、小さい頃から体が弱く、激しい運動は医者から禁じられていた その梢は今、病魔に犯されている もう、治る事はないと、俺は3年になった春、両親から告げられた 「克樹、梢は後どれくらい生きられるか分からないんだ」 父親の言葉は、まるで他人事のように聞こえ、現実味がなかった 『お兄ちゃん、元気になったら、また学校行けるよね』 梢の儚い笑顔が頭の中に浮かぶ 「克樹…克樹!」 俺がハッとすると、目の前に居るすぐるが、首を傾げ俺を見ていた 「ボーっとしてどした?」 「いや、何でもない、そろそろ帰るか?」 教室の中には、生徒がまばらに居るだけだった その生徒達も、1人2人と帰って行く 「夏休みさ、梢ん所行こうぜ」 「駄目だ!」 俺の声が、やけに大きく教室に響いた
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