第1話

１・ キライ

「ありがとうございます。なんか、落ち着いてきました。ちょっと悔しいですけど」
『また、何かあれば都合良ければ聞きますから。そろそろ戻ります』

あたしはお礼を何度も言い、先輩は電話を切った。

”一人で抱えられない時、誰でもあるから。悠子さんは抱えすぎる。悠子さんが私になら話しやすいと言うなら、信頼される人間に価すると思ってもらえてる訳です。信頼関係があるのは、大事な関係という事だから、せっかくの縁、大事にしましょう”

いつだったか、先輩から言われた言葉を反芻する。
それは、先輩がまだ結婚していない時だった。結婚すると聞いた時、もう先輩を頼れない、片思いも封印だと思ったけど。