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浅葱の話は、まさにノロケだった。
入江は浅葱の言動から見込みがないのを悟ったのか、浅葱と喋るより呑みに徹し始めた。
あまり喋らなくなった入江を放置し、浅葱と楽しく話に花を咲かせていた。二時間くらいしたところで、浅葱のスマホが鳴り始める。
「あ、彼氏からだ」
嬉しそうな浅葱を見て、入江は諦めのついた顔で、「リア充なんて知らねえー。ねーさん、呑むよ! 浅葱なんか知らん!」と言ってかなりのペースで飲み始める。
「私、彼氏が近くまで迎えにくるみたいだから、ごめんなさい。ここで帰ります。ありがとうございます」
浅葱がいなくなると、入江は眠そうな顔をしながら机に突っ伏した。
「あーあ、残念」
「そういやさ、あんた、この街まで来たのはいいけど、泊まるとこあんの?」
「ない」
「馬鹿なの」
「野宿するよ」
「馬鹿なの、あんた」
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