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じわりと滲んだかと思えば、一度は収まっていたはずの落涙が、防波堤を破り再び頬を伝い落ちてゆく。
「……ばっ、バカ! 急にそんなこと言うんじゃねぇよ!」
「急じゃねぇよ。流れで分かんだろ! ったく……部長がそんなに泣き虫でいいのかよ」
「部長関係ねぇだろ! それに、今の俺は部長じゃなく、鳴条高校サッカー部背番号十番エースの長谷川 清都の相棒として、ここに来てんだ。これくらいいいだろ」
「いや、別にいいんだけど……どっちにしても同じじゃね?」
「いやいや、全然違うから!」
「え、なに? ヘタレ部長と泣き虫の相棒とどこがどう違うって?」
「キヨォオオオ!!」
悲しみに声をあげる真尋。
しかし、その顔にはいつも通りの笑顔が張り付いていて。
エナメルバッグを背負ったまま、脇目もふらずに駈け出したかと思えば、容赦なく頭から真尋が腹部に飛びついてきて、清都の眼前に星が散った。
二人で顔を見合わせ大声で笑って、そして泣き方を知らぬ赤子のように肩を震わせ、泣いた。
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