第1章

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茜色に染まりゆく緑葉が、乾いた風に攫われて共鳴し始める夕暮れ時。 色欠だった病室が、ようやく命を吹き返した。 「キヨ、俺そろそろ行くわ」 「おう、さんきゅな」 チャックの隙間から見える青色のサッカーボールに目をやりながら、清都は微笑む。 とそこで、真尋が澄んだ声で清都の名を呼んだ。 首を巡らせ、清都は真尋を見る。 「俺、諦めねぇからな」 「……」 「お前が戻ってくるまで、十番は誰にも渡さない。エースの座も俺の相棒の座も、絶対に」 すうっ、と真尋が胸を膨らませて深く大きく息を吸い吐き出し、 「ずっと、ずっと待ってるから」 そう、言った。 自分の内で暴れまわる何かを鎮めようと深呼吸を試みるも、喉の奥が震えてそれほど効果は見られない。 震える声を自制することもせず、清都はゆっくりと口を開いた。 「……ヒロ、あのさ。今回ばっかりは少し、時間かかっちまうかも、しれねぇけど。でも、必ず戻るから。だから、それまであいつらのこと、頼むわ」 「おう。任せろ──っと、もうこんな時間か」 腕に巻き付く時計を見、真尋は拳を突き出し、言う。 「それじゃ、またな相棒」 真尋が笑う。 「おう。またな、相棒」 彼に合わせて作った拳を、清都も胸の高さまで持ち上げる。 突き出された拳と拳が、高々と歓喜の声をあげてコツンとぶつかった。
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