第二章

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そんな時、セーラー服の女の子が1人歩いているのが視界に入ってきた。 あの制服は梅桜学園のもの。そして私の第一希望の高校の制服でもある。 女の子は人気のない路地の方へ歩いて行った。 何処に行くんだろう。 後ろを振り返ると明慶くんはまだ久米さんとおしゃべりをしている。 私は女の子に悪いとは思いつつ、ついて行った。 女の子はどんどん人気のない道を選んで歩いていく。 しばらく後をつけていると細い路地を抜けた先のビルに、1人の若い男が居た。 女の子が駆け寄る。 「亮太さん」 「お、まりな」 吸っていたタバコをもみ消して亮太と呼ばれた男の人は答える。 「ごめんなさい。ホームルームが延びちゃって」 「いいんだよ」 「それで、どうしたの? こんなところで待ち合わせって」 「この前の話なんだけど……」 その言葉を聞いたまりなという女の子の表情が曇る。 「お金ならもう渡さないって約束でしょ」 「頼む」 「前回で最後って約束だったじゃない」 「お願いだ、元金があれば増やせるんだ」 「もう、そんなことやめて真面目に大学に通って」 「……金は持って来てないのか」 「もう無理です」 きっぱりと断るまりなさん。 「そうか……じゃあしょうがないな」 亮太さんがそう言うとそれが合図かのように陰から3人の男が出てきた。 全員20~30代くらいの年齢。長身で黒髪の男、茶髪でメガネの男、そして金髪の男。 「こいつがお前の女か?」金髪の男が聞く。 「はい」 「分かった」 「亮太さん、誰? この人達」 「悪いな、まりな」 茶髪の男がまりなさんの腕を掴む。 「きゃ、何するんですか」 「まりなを渡せばいくらかお金が入るって言うからさ」 「――え?」 何が起こったか分からない、そうした表情をした。 「そう言うことだよ、まりなちゃん。分かったならこっちに来な」金髪の男が腕を引く。 「嫌、離して!」 どうしよう。そう思っている間にもまりなさんは廃ビルに引きずり込まれていく。 私は咄嗟に後を追った。
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