第三章

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廃ビルの1フロア。 そこには腕と足を縛られたまりなさんと悪そうな奴ら3人、亮太さん、そして透明人間の私が居た。 「ほら、これが金だよ」黒髪の男が亮太さんに金を渡した。 「ありがとうございます」 私は今、すごいヤバイ現場に居るなと思った。 「まりなちゃん、だっけ? きみ、男を見る目ないね」笑いながら金髪の男が言った。 私は武器になりそうなものを探すけど、廃ビルだから何もない空間。 そうこうしているうちに亮太さんはお金をもって部屋を出て行こうとした。 ――ちょっと待ったあ! そう思った私は亮太さんを突き飛ばす。 派手に倒れる亮太さん。 「どうしたんだよ。急に転んで」 「誰かに突き飛ばされた」 「はあ? 俺達以外誰もいねえぞ」そう言った茶髪の男に今度は跳び蹴りをする。 「ってぇ。誰だよ、突き飛ばしたのは」 「俺じゃねえよ」そう言った黒髪を蹴飛ばす。 これでどうだ! しかし黒髪の反応は違った。 「人だ」 「え? 何だって?」腰をさすっている茶髪が聞く。 「今のは人に蹴られた感覚に近かった」 「何言ってんだよ。誰もいねーじゃん」 黒髪は鋭い目つきで辺りを見渡す。 私はなんとなく黒髪と距離を置こうと柱に隠れる。 「ちょっと待ってろ」 そう2人に言うと黒髪はコツコツと足音を響かせながらこっちに近づいて来た。 落ち着け、私。今は透明人間なんだから見つかりっこない。 目をつぶって息を殺していると腕を引っ張られた。 「わっ」思わず声を出してしまった。 黒髪と目が合う。 「ふざけた真似してくれたな」 なんで私が見えるの? そう思って腕を見たら私の腕が見えた。 薬を飲んでから1時間経ってしまったのだ。 そのことに気づいた瞬間、バシン、という音と共に頬に痛みを感じた。 「いつから此処に居たのか知らねえけど、お前もただじゃ逃がさねえぞ」 茶髪の男がやって来て私の腕と足を縛り、まりなさんの横に座らされた。 「じゃ、じゃあ俺はこれで」亮太さんは逃げるようにフロアから去って行った。 逃げられた。 そう思った私に黒髪が近づいて来た。 「さっきはずいぶん威勢が良かったな。どういったからくりだ?」
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