第三章

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「別に。悪そうなことをしているから蹴り飛ばしただけ」 黒髪は思案するような顔つきになった。 「……まあいい。大人しくしているんだな」 そう言い残して3人は出て行ってしまった。 取り残された私達。 先に口を開いたのはまりなさんだった。 「ずっと見ていたの?」 「ずっと……というか、ちょこっとというか」 まさか透明人間になって見ていましたよ、なんていえるわけもなく言葉を濁す私。 「私にかまわず逃げていればあなたはこんな目に合わずに済んだのに」 「そんな。見知らぬふりなんて出来ません」 「……正義感が強いのね」 そうなのかな。 「あの人達が来る前に早く紐をほどかなきゃ」 私は後ろ手に縛られた紐をほどこうとする。こういう時にガラスの破片でも落ちていればいいんだけど何も見つからない。 「あなた名前は?」 まりなさんも紐をほどこうと手を動かしながら聞いてきた。 「みかです」 「私はまりな。誰かここに居ることを知っている人はいる?」 明慶くんは知らないだろうな。行き先を伝えていないし。 私は首を横に振る。 「そうだよね。私も言ってない」 沈黙が流れる。 私達、どうなっちゃうんだろう。 しばらくしていると茶髪と金髪がやって来て足の紐をほどいた。 「車に乗るぞ。歩け」 私は座ったまま睨み返す。まりなさんも黙っている。 しびれを切らしたように金髪がまりなさんを無理やり立たせて、引きずるようにして引っ張る。 「やめてください」抵抗するまりなさん。 「まりなさん!」 「お前も来るんだよ」 そう言って茶髪は私を引っ張り上げた。 「触らないでよ」そう言って右足で思いっきり蹴り上げる。 ……けれど空振りに終わった。 「大人しくしろつってんだろ」そう言うと茶髪は私を肩に抱え上げた。 「離して」 ジタバタしてみるけど男の肩から降りられない。 そうこうしているうちにビルを出て目の前にある車にまりなさんが入れられた。 私も車に入れられそうになる。 助けて――。 そう思ったら辺りにブザーの音が響いた。
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