第三章

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何の音? そう思ったら明慶くんが走って来る姿が見えた。 「明慶くん!」 「その子を返してもらおうか」 その言葉に茶髪は私を地面に下した。車から金髪と黒髪が出てくる。 「知り合いか……。見られたんじゃしょうがない。こいつも連れてけ」黒髪が言った。 茶髪と金髪が明慶くんに襲いかかる。 すかさず明慶くんは何かのスプレーを2人の目にかけた。 「うぐ、がぁ」苦しむ2人。 「防犯スプレーも役に立つものだね」 冷静な声で明慶くんは言った。 「てめえ」 黒髪が明慶くんに襲いかかる。 けれど明慶くんは黒髪の手に何かを押し当てた。 ビリリリリという音と共に 「うっ」 そう言って黒髪は倒れた。 倒れた黒髪には目もくれず車に走り寄る。 「みかちゃん、大丈夫?」 「明慶くん」 「怪我はない?」 「うん」 「君は? 怪我は?」 「大丈夫です」 明慶くんは私達の紐をほどいていく。 「警察を呼んだからね、2人とも、もう心配ないよ」 「どうして此処に居ることが分かったの?」 「それ」 私の手首を指さした。それは私が借りっぱなしにしていたレザーブレスレットだった。 「これがどうしたの」 「それにはGPSが付いているんだ」 「キモ! 誰にあげるつもりだったの? ストーカーだよ」 私は慌てて外す。 「ち、ちがうよ。みかちゃん。良美さんに頼まれたんだよ」 「ママに?」 「そう、頼まれたんだ。この前みかちゃん家のココが逃げ出しただろ?」 確かに2週間前、玄関を開けた隙に我が家のトイプードルのココが脱走してしまった。幸いすぐに見つかったけど……。 「もしかしてこれ、ココの首輪?」 「うん。みかちゃんがいなくなった時、それを付けているのを思い出してね、アプリで居場所が分かったってわけ」 これ、首輪だったのか……道理で中途半端な長さだと思った。 そう言っているとパトカーがやって来た。 パトカーを見るなりまりなさんは泣き出した。 怖かったよね。彼に裏切られてショックだったよね。 私も今更ながら恐怖感がよみがえってきた。我ながらよく跳び蹴りなんかしたもんだ。 「もう大丈夫だから」 そう言って明慶くんは優しく肩を寄せてくれた。
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