第一章

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「ただいま、明慶くん」 私は玄関に入るなり呼んでみたけど応答がない。 わたしは明慶くんが居るであろう部屋に上がり込む。 1Kの部屋。キッチンを抜けてすぐのドアを開けた。 そこには明慶くんの研究道具、実験道具があふれかえっている。 ソファーで寝ている明慶くんに近づく。 「おはよー。明慶くん」 「ん……みかちゃん。おはよう」 眠そうに答えてくる。 「おはようだけど、もう昼過ぎだよ?」 「……ああ、もうそんな時間か」 相変わらずのボサボサ頭で起き上がる。 「あれ? みかちゃん学校は?」 「もう終わったよ。テスト期間だから」 「そういえば期末試験って言ってたね。来年は高校生かぁ。みかちゃんは大きくなったね」 ねぼけまなこな明慶くんは私の頭をポンポンする。 明慶くんは私のママのいとこだ。んーと続柄は……従兄弟叔父になるのかな? ママは47歳。いとこである明慶くんは24歳。いとこだけどママとの年の差があるのはまあ、いろんな理由があるけどその話はまた今度。 明慶くんは私が幼稚園児の時に近所に引っ越してきて以来ひとり暮らしをしている。 今は大学院に通っているはずなんだけど……。 「学校は行かなくていいの?」 「大丈夫大丈夫」 そう言ってソファー前の机の上にあった黒縁メガネをかける。 「ごはんは食べた?」 「食べてないなあ。昨日から徹夜で」 予想通りの答え。いつも明慶くんは部屋で何かを作ったり実験をしたりしている。そんなことだろうと私は学校の帰りにコンビニでお弁当を買って来た。 「はい。お弁当」 「ありがとう。頂くね」 そう言ってすぐに食べ始めた。 私は部屋の中を見渡す。 ひとり暮らしには大きな部屋の1K。 床には科学雑誌が積み上げられ、部屋のかどっこには実験スペースとして大きめの机の上には試験官や機械の部品などが散乱していた。 そんな雑多な机の上をよく見てみると、おしゃれなレザーブレスレットがあった。赤いチェックのレザーにワンポイントの立体王冠チャーム。 (明慶くんにしてはいい趣味してんじゃん)
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