第二章

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「まあ、そうだけど」 「じゃあ、町の方に行ってみようよ!」 「うん……」 明慶くんとバス停に行ってみた。 「私のお金は払わなくていいんだよね」 バスの時刻表を見ながら私は言った。 なんてったって透明人間なんだから。 さっきから黙っていた明慶くんが口を開いた。 「やめようみかちゃん。それは、キセルだよ」 「えー」 せっかくバス停まで来たのに。 「……町には自転車で行こう。みかちゃんは後ろに乗れば問題ないし」 そう言って明慶くんは自転車を取りに向かった。後ろを歩く私。 私達の横を幼稚園児くらいの子が2人駆け抜けていく。 年上の子を追いかけて年下の子が走っていく。 「待ってよ、お兄ちゃん」 年下の男の子のはしゃいだ声。 次の瞬間、石につまずいて転んでしまった。 気づかないで走っていくお兄ちゃん。 弟くんは泣きそうになったけど、グッとこらえていた。 ――えらいね。 私は頭をそっとなでて明慶くんの方へ向かった。 「どうしたんだ、転んだのか?」 追いかけてこない僕にお兄ちゃんがそう言った。 「うん」 「ひざ、すりむいてるじゃん。大丈夫か?」 「大丈夫。泣きそうになって、こらえてたら誰かが頭を撫でてくれた」 そう言うとお兄ちゃんは不思議そうな顔をした。 「ねえ、明慶くん」 私は自転車の後ろに乗って尋ねた。 「何? みかちゃん」自転車を漕ぎながら答える。 「キセルはダメなのに2人乗り自転車はいいの?」 「キセルは金銭問題だからね。自転車はタダだし。――それに、僕がこけなかったら誰にも迷惑かけないだろ?」 理屈が通っているような通っていないような。 そんなことを考えながら風景は通り過ぎていく。 町に着いた時、明慶くんは疲れ切っていた。 「大丈夫?」 「う……ん」 「疲れたんでしょう?」ちょっと意地悪な気持ちを込めて言う。 「……」 出不精だからこうなるの。 研究やら実験なんかしてないでもっと体力をつけないと。 そんなことを思っていると明慶くんが手を差し出した。 「何?」 「はぐれたら大変だから、手をつなごう。……腕でもいいんだけど」 「私は小さい子じゃないよ」
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